お母ちゃんと話したい――君を突き動かす衝動は何か?
彼を突き動かす衝動
僕が大学生のころ、英語系の学科にいながら、交換留学でアジア圏へ飛び立とうとしている学生がいた。
「なんでアメリカとかイギリスじゃなくて、その国なの?」
「ん? いや、俺ってハーフだろ。母ちゃんがその国の出身なんだ」
「母ちゃん、日本語話せないの?」
「話せるけど、やっぱり母ちゃんの言葉で話したいんだ。
だから、この国に留学して、母ちゃんの言葉もついでに勉強したいってわけ」
そうか。
やっぱり、相手の母国語でしか伝わらない何かがあるんだ。
母ちゃんと自分のいちばん得意な言葉が違うって、どんな感じなんだろう。
僕には想像もつかなかったけど、その日の夜にはそんなことすっかり忘れて、ぐっすり眠った。
帰国後、その友人はベジタリアンになってた。
彼を突き動かす性衝動
僕が大学生のころ、英語系の学科にいながら、交換留学でアジア圏へ飛び立とうとしている学生がもう一人いた。
「なんで近場は近場でも、オーストラリアとかじゃなくて、その国なの?」
「ん? いや、俺って白人とのハーフでイケメンだろ。アジア圏に行ったら、モテると思って」
「…」
帰国後、その知人は性病検査へと向かった。
僕を突き動かさない衝動
母ちゃんと話したい。
姉ちゃんとピロートークがしたい。
語学に勤しむ理由は十人十色。
その言葉を話す人たちの肌の色も、みんな違う。
見えている色だって、同じじゃないのかもしれない。
言葉を学ぶ理由なんて、なんだっていいのだ。
「好きだから」でもいい。
嫌いだって、別にかまわない。
ひょっとしたら、そもそも勉強なんてしなくていいのかもしれない。
それでも、なんで僕は英語を勉強してるんだろう?