留学生が如く
うらあり
大学の本屋さんの洋書コーナーで立ち読みして、少し賢くなった気分のまま外に出ようとしたところ、ひとりの留学生に声をかけられた。
「コピー、手伝ってー… くれませんか?」
「あ、えーと… Well… I, I…」
「あああ! 日本語で、大丈夫です」
「あ、ああ!」
僕は思わず手でOKマークを作った。
相手もOKマークを返してくれた。
(このOKマークって、通じるのか?)
「これ、コピー、したいです!」
「あ、えーと…」
どうやら、在留カードを両面コピーしたいらしい。
でも、僕も両面コピーなんてしたことない。
とりあえずはさんで、このボタンでも押してみるか。
ポチッ
一筋の光が、左から右へと流れた。
(右から左だったかもしれない)
ふたを開けてみると、留学生の顔が100個くらいに増殖していた。
「あ…」
僕はあわててお財布を取り出し、自分のお金でもう一枚コピーしようとした。
「あー! 大丈夫、です。大丈夫、です」
大丈夫なもんか。
僕は申し訳なさに耐えきれず、留学生と、顔が100個くらいに増殖したコピー用紙をその場に残し、逃げるように立ち去った。
僕は英語も話せないどころか、コピーすら満足にできないのか。
ここで英語をうまく話せなかったことに悔しさを覚えていれば、今ごろ僕は、英語をもう少し話せるようになっていたかもしれない。
でもそれより、僕は留学生の顔写真を100個くらいに増殖させてしまった自分にショックを受けた。
そして何より、「どこの出身ですか?」みたいに会話を広げられなかったことが悔しくて、その晩は高反発の枕を濡らした。
でも、ひとつ気づいたことがある。
日本に来る留学生は、日本語を話したがっている。
日本語を勉強したくて、わざわざ我が国に留学しにきてくれているのだ。
(『ドラゴンボール』と『NARUTO-ナルト-』に感謝)
留学生を相手に英語の訓練をしようなんて、図々しい発想なのかもしれない。
今度は、うまく日本語を話せて、表も裏もちゃんとコピーできますように。