チャート式には無色がある!兄がくれたのは何色でもない本

おいらの定理

兄の部屋の本棚には、白チャートが申し訳なさそうに並んでいた。

自分は数学が苦手だと自覚したうえで、白チャートを選べる勇気。

僕は兄のそんなところを唯一尊敬していた。

高校生のころから、クラスの安心系女子を狙うようなものだ。

その若さで自分のレベルを客観視できるなんて、普通はできない。

そして僕も兄と同じく、数学が苦手だった。

遺伝子には、どうやら逆らえないらしい。

でも僕には、兄と同じように白チャートを選ぶ、そんな勇気がなかった。

赤があるなら赤を選びたい。

白チャートの隣を歩くのは、なんだか恥ずかしい。

でも、そんな力がないことには、ほかでもない僕自身がいちばん気づいていた。

そして兄は、白チャートで勉強した結果、数学が得意にはならなかった。

努力しても、僕の数学はきっと兄と同じ、「小学校への数学」レベルにしか到達できないだろう。

だから僕は、そもそもチャート式を選ばないことにした。

数学を勉強しないという逃げ道、いや、新しい道を作り出した。

僕の数学は、あの日からたすき掛けで止まっている。

染まらない

チャート式は、白、黄、青、赤の4色。

でも僕にとっては、白、紐、T、カルバン・クラインの4種類だ。

チャート式は色だなんて、誰が決めた?

僕のチャート式は無色。

いや、ノーパンだ。

履かざる者になることで、かえって立派なものがよく見えることだってあるから。